IPOのロックアップとは?ロックアップ解除後の株価への影響は?

ロックアップとは、上場日から一定期間 株式の売却に制限を設ける自主規制のことです。

創業者や従業員などの大株主、ベンチャーキャピタルや主幹事証券会社との間で、原則として株式等の新規発行や売却を行わないことについて合意します。

ロックアップは株式の売買を制限し、公開直後の株価の下落を防ぎ、株価の安定化を図るために設けられています。

ロックアップが大株主にかかっているかどうかは、売り圧力が強いか弱いかを推し量る指標にもなりますので、気にしておきたい項目です。ページ下部ではロックアップ期間の解除日一覧も掲載しています。

ロックアップの目的は株価の下落を防ぐこと

ロックアップとは、IPO(新規公開株)の発行に関与する主要な株主や役員・従業員、ベンチャーキャピタルなどが、一定期間、その株式を売却できないように制限する自主規制のことです。

大株主 説明
創業者 企業を設立した人物。株式を多く所有していることが多い
経営陣・従業員 企業の経営者や従業員。株式報酬やストックオプションなどで株式を所有している場合あり
主要株主 企業の株式を一定割合以上保有している投資家
ベンチャーキャピタル(VC)
エンジェル投資家
企業がまだ小さい段階で投資を行った投資家。
成長期を支える資金を提供しており、投資を回収する必要がある

ロックアップにより、大株主から大量の売り注文が出ることを防ぐことで需給のバランスを保ち、市場の安定化を図ることができます。

創業者や従業員から大量の売り注文が出ることはあまりなく、ロックアップで気をつけたいのは、リスクをとって投資した資金の回収に向かう、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家さんの動きです。

ロックアップがかかっていない場合、上場日からすぐに保有株を売ることができるので、株価が上昇しづらくなります。

ロックアップの種類

ロックアップは、法律で既定された「制度ロックアップ」と自主規制の「任意ロックアップ」があります。

任意ロックアップ 制度ロックアップ
概要 企業や投資家が自主的に取り決めたロックアップ 証券取引所や法律によって規定されたロックアップ
典型的な期間 90日間、180日間、360日間 6ヶ月、1年、継続所有
解除条件 期間経過、価格達成、他の特定条件など 期間経過、価格達成など

どちらのロックアップも、市場の安定化や初期の株価変動を抑制する目的があります。

雑談:とある著名な個人投資家がIPOの制度ロックアップ中に、持ち株を処分したことが2021年に話題になりました。投資家さんは迷惑料という形でロックアップ違反により得た利益を企業側に返還し決着。証券取引所の規則違反ではあったものの罰則はありませんでした。大株主が売却したことのよる売り圧力は高く、需給が崩れたキッカケに。

2022年も他のIPOにてロックアップ違反があり、ロックアップは取り決めはあるものの、それを守る仕組みがないことが露呈されました。

ロックアップ期間中の取引制限

ロックアップ期間中は、制限対象となっている株主が株式を売却することができません。
これにより、株価の急激な下落を防止することができます。

ロックアップ期間は各IPOにより異なりますが、90日間または180日間に設定している企業が多いです。
ごくたまに、360日に設定している企業も。

価格によるロックアップ解除条件もあり

企業や投資家が自主的に取り決めた任意ロックアップでは、ロックアップ期間中であっても、公開価格の1.5倍以上でロックアップ解除(売却可能)という解除条件が盛り込まれている場合があります。

公開価格の1.5倍以上に設定する解除条件が多いですが、まれに2倍以上という条件も見かけます。

期間ロックアップ 価格ロックアップ
概要 設定された期間中、株式の売却が禁止 株価が一定の水準に達した場合に解除
目的 株価の急激な変動を防ぐ 株価の目標達成を促進する
条件 上場日から90日間、180日間など 株価が公開価格の1.5倍や2倍など
解除条件 期間経過後 設定された価格に達した場合

期間と価格の両方のロックアップ条件が設定されている場合、期間か価格のどちらかの条件が達成されると、ロックアップが解除されます。

ロックアップ解除後のIPO株の株価への影響

株価下落

ロックアップ解除後、制限対象の株主が株式を売却することができるようになります。

これにより、株式の供給量が増加し、IPO株の株価下落に影響が出ることがあります。

ただし、株価の変動は企業の業績や市場状況、需給など、さまざまな要因によって決まります。
IPO株のロックアップ解除も、株価変動の要因のひとつでしかありません。

ロックアップ制度のメリット・デメリット

ロックアップ制度は、IPO直後の株価の急激な変動を抑制し、市場の安定化を図ることができます。
また、企業の経営陣や従業員が長期的な視点で企業経営に取り組むことを促す効果もあります。

一方で、ロックアップ制度は、制限対象の株主にとっては売却の機会を制限するため、資金の回収が遅れるデメリットがあります。

また、ロックアップ解除後に株価が下落する可能性があるため、投資家にとってはリスク要因となることもあります。

複数VCが多く期間ロックアップのみのIPOは要注意

IPOを行う企業の大株主にVCが多く、ロックアップが期間だけの場合、ロックアップ期間終了後に、大量の売り注文がでる場合がありますので、特に注意が必要です。

参考までに

2022年6月に上場したANYCOLOR(5032)の場合、大株主にVCが多くロックアップ解除条件は期間のみでした。

ANYCOLORの上位株主

ロックアップ期間は2022年12月4日まで。
翌日の5日から大量の売り注文がでて、株価は下落を続けています。

ANYCOLORのロックアップ解除後の株価

特に複数のVCが参加している場合、高い価格で売り抜けたい意思が高まるため、下落の加速も早いように感じます。

ロックアップ期間の解除日一覧

ロックアップ期間の解除日一覧です。
IPO承認時に目論見書(有価証券届出書)に掲載されている日時を一覧で掲載しています。

銘柄名をクリックすると、大株主の一覧とロックアップの解除条件を確認できます。※VC数は上位株主10社のみカウント

銘柄名 VC CVC 上場日 90日 180日
ハッチ・ワーク(148A) 4社 0社 2024/03/26 2024/06/23 2024/09/21
ソラコム(147A) 1社 0社 2024/03/26 2024/09/21
JSH(150A) 7社 0社 2024/03/26 2024/06/23 2024/09/21
ダイブ(151A) 2社 0社 2024/03/27 2024/09/22
シンカ(149A) 5社 0社 2024/03/27 2024/06/24 2024/09/22
情報戦略テクノロジー(155A) 0社 0社 2024/03/28 2024/09/23
カウリス(153A) 0社 0社 2024/03/28 2024/06/25 2024/09/23
マテリアルグループ(156A) 1社 0社 2024/03/29 2024/09/24
グリーンモンスター(157A) 1社 0社 2024/03/29 2024/06/26 2024/09/24
PRISM BioLab(206A) 4社 0社 2024/07/02 2024/09/29 2024/12/28
イタミアート(168A) 2社 0社 2024/04/08 2024/07/06 2024/10/04
ハンモック(173A) 0社 0社 2024/04/11 2024/10/07
レジル(176A) 3社 0社 2024/04/24 2024/07/22 2024/10/20
Liberaware(リベラウェア)(218A) 6社 0社 2024/07/29 2024/10/26 2025/01/24
オプロ(228A) 1社 0社 2024/08/21 2024/11/18 2025/02/16
学びエイド(184A) 3社 0社 2024/05/28 2024/08/25 2024/11/23
アストロスケールホールディングス(186A) 5社 0社 2024/06/05 2024/12/01
インテグループ(192A) 0社 0社 2024/06/18 2024/12/14
ライスカレー(195A) 1社 0社 2024/06/19 2024/09/16 2024/12/15
WOLVES HAND(ウルブズハンド)(194A) 1社 0社 2024/06/20 2024/12/16
タウンズ(197A) 1社 0社 2024/06/20 2024/12/16
PostPrime(ポストプライム)(198A) 0社 0社 2024/06/20 2024/12/16
MFS(196A) 5社 1社 2024/06/21 2024/12/17
豆蔵デジタルホールディングス(202A) 0社 0社 2024/06/27 2024/12/23
ロゴスホールディングス(205A) 1社 0社 2024/06/28 2024/12/24
キッズスター(248A) 1社 0社 2024/09/26 2024/12/24 2025/03/24
Aiロボティクス(247A) 3社 0社 2024/09/27 2024/12/25 2025/03/25
ケイ・ウノ(259A) 2社 0社 2024/10/08 2025/01/05 2025/04/05
オルツ(260A) 6社 0社 2024/10/11 2025/01/08 2025/04/08
カドス・コーポレーション(211A) 0社 0社 2024/07/18 2025/01/13
フィットイージー(212A) 0社 0社 2024/07/23 2025/01/18
Hmcomm(エイチエムコム)(265A) 3社 0社 2024/10/28 2025/01/25 2025/04/25
Heartseed(ハートシード)(219A) 4社 0社 2024/07/30 2025/01/25
Faber Company(ファベルカンパニー)(220A) 0社 0社 2024/07/31 2025/01/26
Cross E ホールディングス(231A) 0社 0社 2024/08/29 2025/02/24
リプライオリティ(242A) 0社 0社 2024/09/25 2025/03/23
アスア(246A) 0社 0社 2024/09/26 2025/03/24
INGS(245A) 0社 0社 2024/09/26 2025/03/24
インターメスティック(262A) 0社 0社 2024/10/18 2025/04/15
伸和ホールディングス(7118) 0社 0社 2024/10/21 2025/04/18
東京地下鉄(東京メトロ)(9023) 0社 0社 2024/10/23 2025/04/20
リガク・ホールディングス(268A) 0社 0社 2024/10/25 2025/04/22
Sapeet(サピート)(269A) 1社 0社 2024/10/29 2025/04/26
株価暴落

IPO承認時と株主構成、保有株数が変わっていると思いますが、ご参考までにどうぞ。

繰り返しになりますが、下記の2つの条件を満たすIPOを保有している場合は、売り圧力に注意です。

  • 複数のVCが上位株主に多い
  • ロックアップ解除条件が期間のみ

また、VCによっては長期保有目的としているところもありますので、その場合、すぐの売り圧力にはなりえません。

ロックアップに関するQ&A

ロックアップ制度があるからといって、必ずしも株価が安定するわけではないのですか?

ロックアップ制度は、株価の急激な変動を抑制する効果がありますが、市場全体の状況や他の要因によって株価は変動します。

ただし、大株主にロックアップがかかっていると売り圧力が減るため、投資家目線ではやや安心してIPO株を買いやすいです。

ロックアップ期間が終わったら、株価は下がることが多いのですか?

ロックアップ期間が終わると、売却制限が解除されるため、株価に影響が出ることがあります。

ただし、株価の動きは企業の業績や市場状況にも左右されるため、必ずしも下がるとは限りません。

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