企業がIPO(上場)を行う理由
企業がIPOを行う目的は、事業資金の調達や社会的信用の向上、採用力の強化などが挙げられます。
目的 | 説明 |
---|---|
資金調達 | 株式を発行して資金を調達し、新しいプロジェクトの開始や事業拡大、負債の返済などに充てる |
企業価値の向上 | 上場により企業価値が高まることで、取引先や顧客に対して信用力を高める |
人材獲得 | 上場企業はブランド力が向上し、優秀な人材を惹きつけることができる。 また、株式報酬を用意することで人材の獲得・定着がしやすくなる。 |
上場による「メリット」と「デメリット」がありますので、それらを考慮して上場を決めています。
目次
企業はIPOで事業資金を得る
株式会社には、上場会社と非上場会社があります。
- 上場会社
証券取引所に上場しており、株式市場で広く株式の売買が行われている株式会社 - 非上場会社
証券取引所に登録されておらず、株式市場で株式を買えない株式会社
株式会社を設立した場合、最初はみんな非上場会社です。
売上高や株主数など、一定の要件を満たすことで証券取引所に上場を申請できます。
IPOにより上場すれば、企業は証券取引所を通じて株式を公開できます。
国内はもとより海外からも株式を購入してもらうことができるので、多くの事業資金を集めることができます。
最近IPOを行った身近な会社
最近、IPOを行った みなさんもご存知の会社です。
上場日 | 会社名 | 上場前の株価 公開価格 |
上場後の株価 初値 |
初値売り の利益 |
---|---|---|---|---|
2023年 4月 |
楽天銀行 | 14万円 | 18.5万円 | +4.5万円 |
2022年 12月 |
note | 3.4万円 | 5.2万円 | +1.8万円 |
2021年 3月 |
ココナラ | 12万円 | 23万円 | +11万円 |
2020年 12月 |
バルミューダ | 19.3万円 | 31.5万円 | +12万円 |
2018年 12月 |
ソフトバンク | 15万円 | 14.6万円 | -3,700円 |
2018年 6月 |
メルカリ | 30万円 | 50万円 | +20万円 |
え?いままで上場していなかったの?と思われた企業があったかもしれません。
世の中には知名度が高いが、まだ上場していない企業がたくさんあります。
2024年もそういった大手企業の上場が予定や噂されていますし、約100社のIPOが見込まれています。
(楽天証券やソラコムなど)
このように、毎年 わたしたちに馴染み深い企業から、知名度の低い企業まで幅広く上場しています。
IPOの実績ページをご覧いただければ、おそらく知っている企業があると思います。
上場していない企業
上場している企業はごく一部。
世の中、上場していない企業の方が多数です。
東証の上場審査をクリアできるものの、事業資金を調達する必要がないなどの理由で上場していません。
大手企業以外でも、上場が噂されている将来性抜群のベンチャー企業やスタートアップ企業があります。
IPOを行う企業のメリット
企業がIPO(上場)することにより得られるメリットです。
- 株式市場から「事業資金が調達」しやすくなる
- 上場企業として会社の「信用度が上がる」
- 新規に株式を公開することで「知名度が上がる」
1. 株式市場から「資金が調達」しやすくなる
企業がIPOをする理由は、スムーズかつ広範囲で大規模な資金調達です。
企業が事業資金を調達する方法は、いくつかあります。
- 借入
銀行などからお金を借り入れる。 - 助成金、補助金
一定の要件を満たすときに行政から助成金や補助金を出してもらう。 - ファクタリング
売掛金を債権譲渡することによって現金化する。 - 投資
ベンチャーキャピタルや個人投資家などから投資を受ける。
ただ、上記のような方法では、さほど大規模な調達はできません。
銀行や公庫などで借入を利用しようとしても、審査に通らないケースもあります。
そこで企業は上場(IPO)により、新株を大量に発行して投資家に購入してもらうことにより、大きな事業資金を調達することを考え、上場を目指します。
株式が非上場のままでは、買う人が限定され資金を調達できません。
個人や機関投資家を広く集めて株式投資をしてもらうには、取引所に上場する必要があります。
IPOで新たに株を発行することにより、事業資金を調達しやすくなります。
日本中の投資家はもちろんのこと海外の投資家、投資会社も株式を購入してくれる可能性があります。
非上場の状態とは比較にならないほど資金調達が容易になります。
調達した事業資金は、事業拡大や設備投資、サービスの拡充などに利用されます。
2. 上場企業として会社の「信用度が上がる」
上場を目指す企業には、厳しい上場審査があります。
上場審査基準日本取引所グループ
その審査基準をクリアしている企業として、会社の信用度・信頼性がアップします。
上場によって商談しやすくなったり、金融機関から融資を受けやすくなります。
また、「上場企業に就職・転職したい」という学生や中途採用など、優秀な人材を集めやすくなります。
上場企業の中には、資金集めよりも人材集めで上場を目指すところも増えてきている印象です。(IT系の企業)
信用先 | 内容 |
---|---|
金融機関 | 融資をうけやすくなる |
取引先 | 上場企業として信頼度がアップ |
採用面 | 優秀な人材を集めやすい |
3. 新規に株式を公開することで「知名度が上がる」
上場により、企業や提供しているサービスの知名度が上がり、自社商品や自社サービスを広く世に広めることができます。
また、自社商品やサービスも上場していない同業他社と比較して売れやすくなります。
上場後、経済系のTV番組にサービスや商品を取り上げられることが多いです。
メディアに注目されやすくなるのも上場のメリットのひとつかも。
以上、主に3点の理由で企業は上場(IPO)を目指します。
他にも創業者による「起業したからには上場を目指す」といった方針などもありますが。
企業のデメリット
上場は企業にとってメリットがある反面、以下のようなデメリットがあります。
- 証券取引所、監査法人による監督を受ける
- 株主総会の案内の発送など事務作業、管理コストの増加
- 市場で株式を取得され、買収される恐れ
- 株主の意向を反映させる経営が必要
証券取引所、監査法人による監督を受ける
上場すると、その後ずっと証券取引所の方針に従う必要があります。
企業がコンプライアンスを守っているのはもちろんのこと、何か問題がある場合に指摘を受けて軌道修正する必要があります。問題を抱えていると最悪の場合、上場を廃止されてしまうデメリットもあります。
そのほか、監査法人などに対策を依頼する必要がありコストが発生します。
事務作業、管理コストの増加
上場すると、株主総会や配当金の通知や株主優待の発送など上場に関する事務作業が増えます。
対応人員の増加など、企業の負担となるケースがあります。
買収のおそれ
上場すると株式が市場に売り出されるので、誰でも購入できる状態になります。
すると投資会社やライバル企業などが敵対的な買収を行って、いつのまにか自社株の多くを購入されていた、などというケースもあり得ます。
そこまでいかなくても、上場企業にとって好ましくない人や企業が株主となり、少数株主権などを行使して経営活動を害されるケースもあります。
以上の経営上や費用に関するデメリットを考慮して、上場を敬遠している大手企業もあります。
代表的な企業では小学館や竹中工務店など。
自社で資金調達ができており知名度も高ければ、上場する必要がないというわけです。
企業が上場するには数年かかる
企業が上場(IPO)するには数年かかります。
上場には証券取引所の厳しい審査がありますので、上場準備に時間がかかるわけです。
※詳しい上場の流れや審査基準を確認したい人は新規上場ガイドブック(日本取引所グループ)をご確認ください。
IPOがはじめての人は次項も参考にしてください。
初心者の質問は大歓迎です!